「力を抜け」と言われても抜けない人へ|テニスで脱力できない本当の理由

「力を抜け」と言われても抜けない人へ|テニスで脱力できない本当の理由 体幹・脱力

壁打ちのとき、ボールはきれいに当たるのに。

スクールのラリーになった瞬間、なぜか腕がぎゅっと固まる。コーチに「力入りすぎ」「もっと脱力して」と言われるたびに、頭ではわかっているのにどうにもならない、という感覚を持っている方もいると思います。

「脱力」という言葉はよく聞くのに、具体的にどこをどう抜けばいいかが誰も教えてくれない。それ、普通の感覚です。脱力が難しいのは、やる気や慣れの問題ではなく、体の使い方にかかわる話だからです。力を「抜く」のではなく、力が「抜ける」体の状態をどう作るか、という視点で整理します。

「力を抜け」と言われても、どこをどう抜けばいいかわからない

「力を抜け」と言われても、どこをどう抜けばいいかわからない

「力を抜いて」という言葉は、テニスの現場でおそらく最も多く飛び交う指示のひとつです。でも、言われた側からすると、「どこを?」「どの程度?」「いつ?」という疑問だらけになります。

全身の力を抜いたらラケットが飛んでしまいます。かといってグリップをしっかり握れば腕全体が固まります。「適度に抜く」と言われても、その感覚が最初からわかっていれば苦労しません。

この「どこをどう抜くか」が言語化されないまま「とにかく脱力」と指示される場面がほとんどです。結果として、力を抜こうとするほど逆に意識が腕に集まり、かえって力みが増す、という状態になりやすいのです。

テニスに取り組んでいる方の中には、素振りでは力が抜けているのに球出しになると固まる、という経験をされている方もいます。これは気持ちの問題ではなく、体がどこを基点にして動いているかの問題です。

腕だけで抜こうとするから難しくなる

脱力に取り組むとき、多くの方が「腕の力を抜く」ことから始めます。それ自体は間違いではないのですが、腕だけに注目するとなかなか上手くいかないことがあります。

ラケットを振るという動作を考えたとき、腕はあくまでスイングの末端です。テイクバックからインパクトにかけての動きは、本来であれば下半身から始まります。そこから体幹へと伝わり、肩・腕・ラケットのヘッドへと順に届いていきます。

ところが腕だけで打とうとすると、下半身や体幹が使われず、腕がすべての仕事を引き受けます。するとどうなるか。腕がぎゅっと固まるのは、力みではなく、不安定な状態で打とうとしたときに体が自然に行う「がんばり」です。腕が頑張るのは、それ以外に頼れる場所がないからとも言えます。

力を抜こうとするとき、腕だけに意識を向けるのではなく、腕が「力まなくていい状態」を作ることが先決です。その状態とは、下半身と体幹が動きの土台としてしっかり働いている状態です。

体の構造として、腕がぎゅっと固まっているとラケットのヘッドはスピードに乗りにくくなります。逆に腕の力みが抜けているほど、ヘッドはスーッと走りやすくなります。「力んでも飛ぶ」という方向には限界があります。

体の軸が整うと、自然に余計な力みが抜けてくる

「脱力しよう」と意識して抜こうとするより、体の土台が整うことで力みが自然に抜けてくる、という順番があります。

どういうことかというと、体に安定した軸のようなものが通ってくると、下半身から体幹、腕へと動きが伝わりやすくなります。すると腕は「つなぎ役」として自然に働けるようになり、わざわざ力まなくてもボールに力が伝わるようになります。

腕の力みは、多くの場合「腕が主役になっている」ときに起きます。体全体が連動してくると、腕はその連動の一部になるため、余計な仕事をしなくてよくなります。力みが抜けるというよりも、力む必要がなくなる、という感覚に近いかもしれません。

また、体の軸が整ってくると、タイミングのとり方も変わってくることがあります。腕だけで打っているときは、ボールに合わせようとして腕がぎゅっと力みやすくなります。体全体で打てるようになると、コントロールしようとする腕の緊張が少しずつ和らいでくる、という事例があります。

「力を抜け」と言われても抜けなかった方の中に、体の土台を意識する取り組みをしてから、スイングがスッと楽になったという話はよく聞かれます。根性で抜こうとするのではなく、「抜けやすい体の状態」を作ることが、脱力への近道になることがあります。

上達が止まっている理由について、もう少し掘り下げたい方はテニスが上達しない人の共通点についての記事もあわせてご覧ください。体の使い方という視点から、上達が止まる仕組みを解説しています。

脱力できなかった人の話

ここでは、体の使い方を変えることで脱力の感覚が変わってきた事例をご紹介します。効果には個人差があります。

7年テニスを続けているAさんは、ラリーの基礎はできているものの、試合になると腕がぎゅっと固まる感覚が抜けないと感じていました。コーチからも「力みすぎ」と毎回言われており、意識して力を抜こうとするほど逆に固まるという状態でした。

あるとき、下半身の使い方に意識を向ける取り組みをしてみたところ、テイクバックから体の重心が安定するようになり、インパクトの瞬間に腕を「締める」感覚が少し変わってきたといいます。「ボールがラケットに乗る感じがするようになった」という言葉が印象的でした。

「何かを加えたわけではなく、余分なものが抜けた感じ」という表現をされていたのが、脱力の変化をよく表しているように思います。

※実際の声をもとに再構成した例です

Bさんはフォアハンドのスイングで腕が固まり、ミスが続くことを気にしていました。「脱力して」と言われるたびに手首をぶらぶらさせてみたり、グリップを緩めたりしていましたが、なかなかコントロールが安定しませんでした。

体幹の使い方を意識した動きを練習に取り入れてから、腕だけで合わせようとする感覚が少し変わってきたといいます。特にテイクバックの段階で体全体が準備できているときのほうが、インパクトが楽だという感覚を覚えてきたとのことでした。

※実際の声をもとに再構成した例です

体幹の連動について詳しく知りたい方は体幹で打つとはどういうことかを解説した記事もご参考ください。

よくある質問

フォアハンドで脱力するにはどうすればいいですか?

フォアハンドの脱力は、腕だけで解決しようとすると難しくなりやすいです。テイクバックの段階で下半身と体幹が準備できていると、腕は「送り出すだけ」になり、余計な力みが入りにくくなることがあります。腕を脱力しようとするより先に、体全体が連動しているかどうかを確認してみると、感覚が変わってくる場合があります。

手首はどれくらい脱力すればいいですか?

手首は完全に脱力してしまうとコントロールが失われます。一方でぎゅっと固めると、インパクトの瞬間にラケットヘッドが走らなくなります。「握っているけれど固めていない」という状態が理想と言われますが、その感覚をつかむには、腕より上流(体幹・下半身)が使えているかどうかが影響してきます。手首の力みが気になる場合は、そこだけを調整しようとするより、体全体の連動を見直してみることをおすすめします。

壁打ちでは力が抜けるのに試合では力むのはなぜですか?

壁打ちでは「返す」という一つの目的に集中できるため、体が自然な動きをしやすくなります。試合になると「ミスできない」「相手がいる」という緊張感が加わり、腕がぎゅっと固まりやすくなります。これはメンタルの問題でもありますが、体の土台が整っているほど緊張下でも体の動きが崩れにくくなると言われています。試合と練習のギャップが大きい場合は、体の土台から整えることが一つのアプローチになります。

脱力するとスピードが出なくなりませんか?

力を抜くとボールが飛ばなくなると感じる方は多いですが、実際には体の連動がしっかりできている状態のほうが、腕だけで力んで打つより球速が出やすいとされています。ラケットのヘッドが走るかどうかは腕の力みよりも、体全体の連動とタイミングの影響が大きいです。脱力=力がない、ではなく、脱力=余分な力を使っていない、という状態が理想です。

テニスで脱力できないのは、根性が足りないからでも、センスの問題でもありません。腕だけで抜こうとしているときに、脱力は最も難しくなります。

体の土台が整うと、腕が力まなくていい状態が自然に生まれてきます。「抜こうとしなくても抜けている」という感覚は、そういう仕組みから来ています。

まずは体の使い方を一度試してみることで、今まで感じたことのなかった感覚が生まれてくることがあります。

体の使い方を体験してみたい方へ

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