壁打ちや練習ラリーでは気持ちよく打てるのに、いざ試合の一球目でラケットを握った瞬間、手にぎゅっと力が入る。そんな経験はありませんか。
コーチや仲間からは「もっとリラックスして」と言われます。でも、その言葉どおりに力を抜こうとするほど、なぜか体が固まっていく。頭ではわかっているのに、どうにもならない感覚です。
これは、あなたの気持ちが弱いからでも、経験が足りないからでもありません。試合で力むことには、体の使い方が深く関わっています。ここでは、その仕組みと、力みが抜けていく方向を整理します。
試合になると力むのは、気持ちが弱いからではありません

「本番に弱い」「メンタルが原因」と、自分を責めていませんか。たしかに緊張は気持ちから始まります。でも、緊張そのものはトップ選手でも感じていると言われます。
問題は、緊張したときに体がどう反応するかです。ミスできないと感じた瞬間、多くの人は無意識に体を縮めて、腕でボールをコントロールしようとします。この「縮んで固まる」反応が、力みの正体です。
つまり力みは、心の弱さというより、緊張に対して体が自然に起こす守りの反応です。気持ちだけで抑え込もうとしても抜けないのは、そのためです。
「落ち着け」と言い聞かせても、手の力みが抜けない理由

試合中に「落ち着け、力を抜け」と自分に言い聞かせた経験は、きっとあると思います。ところが、そう思うほど意識が腕や手に集まって、かえってぎゅっと固まってしまう。
これは、力みを腕だけの問題としてとらえているときに起きやすい現象です。腕の一部分を「抜こう」とすると、そこに神経が集中して、逆に緊張が強まります。
力みは、腕という部分ではなく、体全体の状態から生まれています。土台となる部分が落ち着いていないと、末端の腕がその不安定さを補おうとして、勝手に力んでしまうのです。
練習と試合で、変わっているのは「体の状態」です

練習では打てるのに試合で崩れる。この差は、フォームが変わったからではありません。変わっているのは、体の状態のほうです。
練習中は「返す」という一つの目的に集中できるので、体が自然な動きをしやすくなります。ところが試合になると、勝ち負けや相手の視線が加わり、体が緊張で縮こまる。同じ動きをしているつもりでも、力の伝わり方が変わってしまいます。
緊張して縮こまった体は、動ける範囲がせまくなります。すると、いつもより窮屈なフォームになり、打点も詰まりやすくなる。フォームを変えたつもりはないのに崩れるのは、体そのものが縮んでいるからです。
よく「パワーが足りないから崩れる」と考えがちですが、多くの場合は逆です。余計な力みが、下半身から生まれた力の伝わりを途中でせき止めている。飛ばそうと力むほどボールに力が乗らなくなるのは、そのためです。
逆に言えば、体の土台が落ち着いている状態を保てると、緊張していても動きが崩れにくくなります。緊張をゼロにするのではなく、緊張しても縮まない体をつくる、という方向です。
力の抜けた状態は、頭で作るより一度体で知るほうがつかみやすい
ここまで読んで、「では具体的にどうすれば」と思われたかもしれません。正直なところ、力みが抜けて整った体の状態は、言葉で細かく追いかけるより、一度実際に体で味わってしまうほうがずっと早いです。
頭で「こう動かそう」と考えている間は、どうしても意識が腕に戻ってしまいます。ところが、力が自然に抜けた状態をいちど体が覚えると、その感覚は試合の緊張のなかでも残りやすくなります。スッと肩の力が落ちる、あの感じです。
練習では打てるのに試合になると固まってしまうなら、緊張しても縮まない体の感じを、一度実際に確かめてみてください。
よくある質問
試合前の緊張をなくすにはどうすればいいですか?
緊張を完全になくそうとすると、かえってそこに意識が向いて力んでしまうことがあります。緊張はしても構わない、という前提で、緊張したときに体が縮まりにくい状態をつくるほうが現実的だと言われています。深呼吸などで一時的に和らぐこともありますが、根っこにあるのは体の状態です。
練習ではできるのに試合でできないのは、自分だけでしょうか?
あなただけではありません。壁打ちや球出しでは打てるのに実戦で崩れるのは、技術が身についていないというより、緊張の下で体が変わってしまうことが原因の場合が多いです。珍しいことではありません。
力むと、なぜボールが飛ばなくなるのですか?
腕をぎゅっと固めると、ラケットのヘッドがスピードに乗りにくくなります。ボールの勢いは腕の力よりも、体全体の連動とヘッドの走りから生まれます。力めば飛ぶという方向には限界があり、むしろ力みが伝わりを妨げてしまうことが多いのです。
試合で力むのは、あなたの心が弱いからではありません。緊張したときに体が縮んで、腕だけで何とかしようとする。その仕組みがわかると、責めるべきは自分ではないと気づけます。
体の土台が落ち着いてくると、緊張のなかでも動きが崩れにくくなります。「抜こう」と頑張るのではなく、「抜けている状態」を体で覚えておくことが、試合で練習どおりに打つための土台になります。


コメント